プレスリリースの書き方を調べると、「基本の構成」「タイトルは30文字前後」といった型の説明はたくさん見つかります。ところが、広報担当がいない小さな会社が最初に迷うのは、その手前です。「そもそも出すネタがあるのか」「何から書き始めればいいのか」。この記事では、そこから順に、最初の1本を出すまでの手順をまとめます。

先に決める:プレスリリースは誰に読ませる文書か

プレスリリースは、新聞・雑誌・Webメディアの記者に向けて「取り上げる材料」を渡す文書です。最近は配信サービスを使うと、取引先や検索から来た一般の人にも読まれます。読み手が違えば、欲しい情報も変わります。

  • 記者:記事にできる新しさがあるか、事実の裏付け(数字・日付)があるか
  • 取引先・お客さん:自分に関係があるか、どこに問い合わせればいいか
  • 検索から来る人:何の会社が、何を、いつ始めたのか

3者に共通するのは「短時間で要点がわかること」です。1枚読んだだけで、誰が何を始めるのかが伝わる文書を目指します。

ネタがあるか確かめる3つの質問

「うちにはネタがない」と感じる会社でも、次の3つの質問に1つでも当てはまれば、材料になります。

  1. 新しいか:初めてのこと、変えたこと、始めたことはあるか
  2. 数字があるか:件数・期間・価格・人数など、事実として言える数字はあるか
  3. 誰かの役に立つか:読んだ人が「使える」「知っておきたい」と思う内容か

ネタになりやすい例は、たとえば次のとおりです。

  • 新商品・新サービスを始める
  • 既存の商品に新しい使い方や仕様を加える
  • イベント・セミナー・展示会を開く
  • 他社・団体と協力する(業務提携・共同開発)
  • 自社で調べた数字をまとめる(お客さんへのアンケート結果など)

「社長が交代した」「事務所を移転した」も立派なネタです。大きな話でなくても、事実がはっきりしていれば書けます。

書く前の5行メモ

いきなり文章を書き始めると、長くなって要点がぼやけます。まず5行のメモを作ります。

  1. 誰が:会社名と、何をしている会社か
  2. いつ:発表日と、始める日(開始日・発売日・開催日)
  3. 何を:商品・サービス・イベントの中身
  4. なぜ:始める理由。お客さんのどんな困りごとに応えるのか
  5. 問い合わせ先:担当者名・電話・メール

埋まらない項目があれば、先に社内で決める点を洗い出しましょう。埋まれば、あとは文章にするだけです。

基本構成5つと、パーツごとの書き方

プレスリリースは、次の5つで構成するのが基本です。

① 発信日

文書の一番上に、発表する年月日を入れます。「いつの情報か」が記者にとって大事だからです。

② タイトル

30文字前後を目安に収め、最も伝えたいこと(新しさ・数字)を先頭に置きます。会社名だけが目立つタイトルや、「〜のお知らせ」だけのタイトルは、中身が伝わりません。

  • 弱い例:新サービス開始のお知らせ
  • 強い例:(架空)中小企業向けの請求書チェックサービスを10月1日に開始、月額3,000円から

③ リード(導入文)

タイトルの下の2〜3文で、5W2H(誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように・いくらで)を言い切ります。リードだけ読んで全体がわかる、が合格ラインです。

④ 本文

リードで述べたことの詳細です。「結論→理由→具体的な内容」の順に書き、1文は50字以内を目安(必須ではありません)にします。長い文は2つに切ります。商品なら仕様・価格・販売方法、イベントなら日時・場所・申し込み方法を、箇条書きや表で見やすく並べます。

⑤ 会社概要・問い合わせ先

会社名・所在地・代表者名・事業内容・URLを入れ、最後に問い合わせ窓口(担当者名・電話・メール)を書きます。記者が「確認したい」と思ったときにすぐ連絡できることが大切です。

分量はA4で1〜2枚が目安です。

場面別の型(架空の会社名の例文つき)

新商品

株式会社〇〇、手づくり石けん「△△」を10月1日に発売 香料・着色料不使用

〇〇(東京都〇〇区、代表:□□)は、10月1日、香料・着色料を使わない手づくり石けん「△△」を発売します。敏感肌のお客さまから「香りが強いと使えない」という声が寄せられたことが開発のきっかけです。価格は1個1,200円(税込)。自社ネットショップで販売します。

イベント

〇〇商店会、11月3日に「親子で作る陶器市」を開催 入場無料・事前申込み制

〇〇商店会は、11月3日(祝)10時〜16時、〇〇公園で「親子で作る陶器市」を開催します。対象は小学生と保護者、定員40組。体験料は1組1,500円(送料込み)で、参加者が絵付けをした器を後日自宅へ届けます。申込みは10月20日まで、公式サイト(URL)で受け付けます。

業務提携

株式会社〇〇と△△株式会社、共同で在庫管理アプリを開発 2027年春の提供開始を予定

〇〇と△△は、小規模店舗向けの在庫管理アプリを共同で開発することで合意しました。〇〇の店舗運営の知見と、△△のアプリ開発の技術を組み合わせ、2027年春の提供開始を目指します。

型に当てはめると、必要な情報の抜けが減ります。本文から問い合わせ先まで、1本分の枠は次のとおりです。

【タイトル】(30字前後)
【リード】誰が・いつ・何を・なぜ(2〜3文)
【本文】
■ 概要:内容、価格、販売・申込みの方法
■ 開始日・開催日:
■ 開発・開催の背景:お客さんのどんな声や困りごとがきっかけか
【会社概要】会社名/所在地/代表者名/事業内容/URL
【問い合わせ先】担当者名/電話/メール

載りやすくなる書き方のコツ

  • 結論を先に書く:新しいこと、いちばん言いたいことを最初の1文に
  • 一文を短く:50字以内。主語と述語が離れないようにする
  • 数字を入れる:「多くの」より「300人が参加」。ただし裏付けのある数字だけ
  • 広告のような表現を避ける:「業界初」「革新的」「最高の」は、根拠を示せないなら使いません。誇張は信用を落とします
  • 専門用語に説明をつける:記者は専門家とは限りません

出す前のチェックリスト10項目

  1. 日付・曜日・時間は合っているか
  2. 会社名・商品名・人名・肩書きに誤字はないか
  3. 数字の単位・桁・出典を確認したか
  4. 「必ず」「絶対」「No.1」など、根拠のない断定を使っていないか
  5. 他社名・他社商品名を出すとき、許可や事実確認をしたか
  6. 写真・画像・イラストの著作権は問題ないか
  7. 写っている人の肖像権(本人の許可)は取れているか
  8. 問い合わせ先に、実際に電話・メールに出られる人を書いたか
  9. リードだけ読んで要点がわかるか
  10. 第三者(会社の外の人)に読んでもらい、わかりにくい所はないか

とくに5・6・7は、後から問題になりやすい項目です。

出したあとに見る数字

小さな会社は、見る数字を3つに絞ります。

  • 閲覧数:配信先のページや自社サイトで、どれだけ見られたか(配信サービスの管理画面で見られる場合があります)
  • 記事化:メディアに取り上げられたか。自社名や商品名で検索して探します。配信先サイトへの原文の転載と、編集部が書いた記事は分けて記録します(転載は報道実績とは別物です)
  • 問い合わせ・申込み:リリースを出したあとに増えたか。「どこで知りましたか」と聞いておくと、つながりが見えます

出してすぐ結果が出るとは限りません。1回で判断せず、数回続けて見て、反応が多かったテーマを次に活かします。

よくある質問

Q. 何文字くらい書けばいいですか?
A. A4で1〜2枚が目安です。文字数より、要点が先にあるかを見ます。

Q. いつ出せばいいですか?
A. 申込みの締切、集客の期間、媒体の制作日程から逆算して決めます。イベントは1か月前など、早めの発表を検討してください。決まった正解はありません。

Q. 無料の配信サービスでもいいですか?
A. 無料でも使えるサービスはあります。ただし、サービスのサイトに載るだけなのか、記者への配信も含むのかが違うので、使う前に確認してください。

Q. 自社サイトにも載せたほうがいいですか?
A. 載せるのがおすすめです。自社サイトに残せば、後から調べた人が確認できます。

配信先の選び方へ

書けたら、次は「どこに出すか」です。配信サービスの違いと選び方は、こちらの記事にまとめています。

プレスリリース配信サービスの選び方|申し込む前に決めておきたい3つのこと

最初の1本は、完璧でなくても出してみることが大事です。5行メモを作るところから、始めてみてください。(APOLLOSは、中小企業の「価値が届き・理解され・選ばれる」お手伝いをしています。)