広告の効果測定を調べると、CTR、CPA、ROAS、LTV と、指標の名前がずらりと並びます。全部を覚えて全部を見ようとすると、結局どの数字を見て判断すればいいのか分からなくなります。
小さな会社の広告で大事なのは、指標を増やすことではなく、広告を出す前に「何を見るか」を決めておくことです。この記事では、広告費が月に数万円〜数十万円でも使える、効果測定の考え方と手元でできる測り方をまとめます。
結論:測る前に「目的・見る数字・見る期間」の3つを決める
出稿が終わってから「どう測ろう」と考えると、たいてい測れません。出す前に、次の3つを紙に書いておきます。
- 目的:知ってもらう/問い合わせをもらう/買ってもらう、のどれか1つ
- 見る数字:その目的に合う数字を1つだけ
- 見る期間:いつからいつまでを見て、いつ判断するか
この3つが決まっていれば、指標を全部並べなくても判断できます。逆に決まっていないと、数字が良くても悪くても「だから何?」で終わります。
広告効果は3種類。どれを見たいかで見る数字が変わる
広告の効果は、大きく3つに分けられます。
| 種類 | 見たいこと | 見る数字の例 |
|---|---|---|
| 接触 | どれだけ届いたか | 表示回数、リーチ、クリック数 |
| 心理 | どう思われたか | 認知度、好意度、指名検索の数 |
| 売上 | 買われたか・問い合わせが来たか | 問い合わせ件数、購入件数、CPA |
注意したいのは、接触の数字が良くても、売上につながるとは限らないことです。表示回数が多くても、相手に関係のない広告なら問い合わせは来ません。逆に、表示回数が少なくても、探している人にだけ届けば問い合わせは来ます。
出す前に決める3つのこと
1. 広告の目的を1つに絞る
「知ってもらいたいし、問い合わせも欲しいし、売上も上げたい」は、すべて正しい願いですが、1つの広告で同時に判断の中心にはできません。今回の広告の目的は何かを1つ選びます。
- 知ってもらう(認知):まだ会社やサービスを知らない人に届ける
- 問い合わせをもらう:興味のある人に、連絡という行動をしてもらう
- 買ってもらう:商品ページや申し込みまで進んでもらう
2. 目的に合う数字を1つ決める
目的が決まれば、見る数字も決まります。
| 目的 | 見る数字(1つ) | 補助的に見る物 |
|---|---|---|
| 知ってもらう | 会社名・サービス名の検索数(指名検索) | 表示回数、リーチ |
| 問い合わせをもらう | 問い合わせ件数と「どこで知ったか」 | クリック率、問い合わせまでの費用 |
| 買ってもらう | 1件の購入にかかった広告費(CPA) | 購入率、客単価 |
認知を目的にした広告でクリック数だけを見ると、「クリックが少ないから失敗」と誤って判断しやすくなります。認知なら、広告を見た人が後から会社名で検索したかを見ます。
3. 見る期間と、判断を急がない目安を決める
広告は、出した当日に結果が出るとは限りません。見た人がすぐに問い合わせるとは限らず、数日〜数週間たってから連絡が来ることもあります。そのため、次の2つを先に決めておきます。
- 見る期間:例)出稿の開始から4週間
- 判断する日:例)4週間後の月曜に、決めた数字だけを見て、続ける・直す・やめるを決める
配信を学習しながら調整する広告(自動で配信先を最適化するタイプ)は、媒体ごとに「効果が安定するまでの目安」が公式に案内されています。使う媒体の公式ヘルプで、最新の目安を確かめてから期間を決めてください。数字は媒体や時期で変わるため、この記事では書きません。
主な指標を最小限だけ
ここまでの3つが決まったら、必要な指標だけ使います。式は次のとおりです。
| 指標 | 意味 | 式 |
|---|---|---|
| CTR(クリック率) | 表示されて、どれだけクリックされたか | クリック数 ÷ 表示回数 × 100 |
| CPC(クリック単価) | 1クリックにかかった費用 | 広告費 ÷ クリック数 |
| CV(コンバージョン) | 問い合わせや購入など、目的の行動の数 | 件数を数える |
| CVR(コンバージョン率) | クリックした人のうち、目的の行動をした割合 | CV ÷ クリック数 × 100 |
| CPA(獲得単価) | 1件の獲得にかかった費用 | 広告費 ÷ CV |
| ROAS(広告費用対効果) | 広告費に対して、売上がいくらか | 売上 ÷ 広告費 × 100 |
計算の例(数字は説明のための仮の例です)
広告費が3万円、表示回数が20,000回、クリックが300回、問い合わせが6件、そのうち2件が成約し、その広告経由と確認できた売上が40万円だったとします。
- CTR = 300 ÷ 20,000 × 100 = 1.5%
- CPC = 30,000 ÷ 300 = 100円
- CVR = 6 ÷ 300 × 100 = 2%
- CPA(問い合わせ) = 30,000 ÷ 6 = 5,000円
- ROAS = 400,000 ÷ 30,000 × 100 = 約1,333%
なお、LTV(顧客生涯価値)は「1人のお客さんが取引の期間に払う合計」です。リピートや継続のある商売では、最初の1件だけで広告費を回収できなくても、継続購入による利益が費用を上回る場合もあります。最初のうちは、1件目の回収だけで見て構いません。
ツールを入れずにできる測り方
測定ツールを入れなくても、手元でできる測り方があります。広告費が少ないうちは、こちらで十分なことが多くあります。
問い合わせの「どこで知りましたか」
問い合わせフォームに「どこで知りましたか」の選択欄を1つ付けます。選択肢は「検索」「SNS」「広告」「知人の紹介」「その他」くらいで構いません。電話の場合は、受けた人が最初に必ず聞く、と決めておきます。これだけで、広告をきっかけにしたと回答した問い合わせの数を把握できます。
広告専用のURLと電話番号
広告のリンク先に、広告専用のURLを使います。URLの末尾にパラメータ(utm_source など)を付けると、アクセス解析でどの広告から来たかが分かります。チラシや看板なら、専用のURLやQRコードを印刷します。専用の電話番号を用意できれば、電話の入り口も区別できます。
指名検索の数
認知を目的にした広告は、Google Search Console で「会社名」「サービス名」の検索語の表示回数とクリック数を見ます。広告を出した前と後の同じ長さの期間で比べ、変化を手がかりにします。表示回数は検索した人の数そのものではなく、広告を見た人かどうかも区別できないため、これだけで広告の効果とは言い切れません。
出稿前後を同じ曜日・同じ期間で比べる
出稿の前後を比べるときは、同じ曜日・同じ長さで比べます。たとえば「出稿前の4週間」と「出稿後の4週間」です。曜日が違うと、週末や連休の影響で正しく比べられません。
媒体別のつまずき
Web広告・SNS広告
数字が自動で取れるのが利点ですが、クリックされた数と、申し込まれた数は別です。クリックが多いのに問い合わせが来ないときは、広告ではなく、リンク先のページに原因があることが多くあります。
チラシ・フリーペーパー・看板などのオフライン
数字が自動では取れません。専用のURL・QRコード・クーポン・「見ました」の一言など、広告の側に目印を仕込むことで測ります。目印がなければ、効果は測れないと考えて、出稿前の前後比較で見ます。
数字が悪かったときの見方
数字が悪くても、すぐにやめる必要はありません。やめる前に、次の5点を確認します。
- 期間は足りているか:決めた期間のうちに判断していないか
- ほかの要因と重なっていないか:季節、連休、ほかの施策、取引先の動きなど
- 広告の側の問題か、リンク先の問題か:クリックは多いのに申し込みが少ないなら、ページ側を疑う
- 届けた相手は合っているか:狙った相手ではない人に出ていないか
- 測り方が合っているか:目的に合わない数字を見ていないか(認知なのにクリック数だけを見ている、など)
5点を確認しても数字が動かない場合は、広告の内容・届ける相手・リンク先のうち1つだけを変えて、もう一度同じ期間で測ります。いくつも同時に変えると、何が効いたのか分かりません。
出稿前後の記録表のひな形
次の項目を、スプレッドシートに作っておきます。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 目的 | 認知/問い合わせ/購入のどれか |
| 見る数字 | 1つだけ |
| 見る期間 | 開始日〜終了日 |
| 判断する日 | 年月日 |
| 広告費 | 合計 |
| 結果の数字 | 見る数字の実績 |
| ほかの要因 | 同じ期間にあった出来事 |
| 次にすること | 続ける/直す/やめる |
よくある質問
広告費が月に数万円でも、測る意味はありますか?
あります。むしろ少額のうちに、何が当たるのかを知っておく方が無駄が減ります。大げさな測定は要りません。「どこで知りましたか」の1問から始められます。
測定ツールは必ず必要ですか?
最初は必須ではありません。無料のアクセス解析と、問い合わせの聞き取りで足ります。ツールを選ぶときは、機能を比べる前に、「何を見たいのか」を決めてからにします。
認知を目的にした広告の効果は、どう言い切ればいいですか?
言い切るのは難しいので、「指名検索の増え」や「問い合わせ時の『どこで知りましたか』の回答」などの、複数の手がかりを並べて、傾向として見るのが現実的です。1つの数字で証明しようとしないことが大切です。
まとめ
- 広告を出す前に、目的・見る数字・見る期間の3つを決める
- 小さな会社は、指標を増やすより、1つの数字を同じ期間で追う
- ツールがなくても、「どこで知りましたか」・専用URL・指名検索・前後比較で測れる
- 数字が悪くても、期間・ほかの要因・リンク先・相手・測り方を確認してから判断する
広告の前の「何を伝え、誰に届けるか」を整える工程は、ブランディングの領域です。あわせて読みたい記事は次のとおりです。
- ブランディングとは何か
- ブランディング費用の考え方
広告の見方や、認知の測り方で迷ったときは、APOLLOSの無料相談もご利用ください。