「うちの強みは何ですか?」と聞かれて、「品質には自信があります」「お客様に丁寧に対応しています」と答えたことはないでしょうか。間違いではありません。ただ、同じことを隣の会社も言っています。お客さんから見ると、どちらを選ぶ理由にもなりません。

この記事では、その「選ぶ理由」を一言にしたものであるUSPについて、意味と作り方を小さな会社向けにまとめます。結論から言うと、USPは「強み」を探す作業ではなく、「お客さんが選んだ理由」を一文にする作業です。

1. USPとは何か

USPは、Unique Selling Proposition(ユニーク・セリング・プロポジション)の略です。直訳すると「独自の売りの提案」。お客さんが求める得と、自社の強み、競合との違いから、「他ではなく、うちを選ぶ理由」を一言で示したものと考えると分かりやすくなります。

もとはアメリカの広告人、ロッサー・リーブスが提唱した考え方で、1961年の著書『Reality in Advertising』で体系化されました。広告は「この商品を買えば、こんな良いことがある」という提案でなければならない、という整理です。

有名な例が、チョコレートのM&M’sです。「お口でとろけて、手にとけない」。チョコレートがどう作られているかではなく、お客さんにとってどんな良いことがあるか(手が汚れない)を言っています。

2. 「強み」とUSPは違う

よくある勘違いが、強みをそのまま並べることです。

  • 強み:「国産の素材を使っている」「創業30年」「スタッフの対応が丁寧」
  • USP:「夜20時まで、仕事帰りに間に合う」「見積もりは、その日のうちに返す」

強みは、会社の側から見た良い点です。USPは、お客さんの側から見た「選ぶ理由」です。強みがお客さんの得にならなければ、USPにはなりません。

また、「品質が高い」「安心」「丁寧」のような言葉は、どの会社も言えます。言えるだけで、他社と区別がつきません。ここを混同しないことが、いちばん大事です。

3. USPになる3つの条件

USPの考え方には、昔から言われている3つの基準があります。小さな会社向けに言い直すと、次のとおりです。

  1. 得を約束する:会社の自慢ではなく、「これを買えば、こんな得がある」とお客さんに示すこと
  2. 他社が言っていない:競合が提供できない、または訴えていない、独自の提案であること
  3. お客さんを動かすほど魅力がある:新しいお客さんが「それなら頼みたい」と思うほどの力があること

どれか1つ欠けると弱くなります。得があっても他社と同じなら埋もれ、独自でも魅力がなければ響きません。

なお、小さな会社の実務では、もう一つ確かめておきたいことがあります。それは本当にできること。約束を守れる証拠(やり方・実績・しくみ)がないと、期待とのズレが不満になり、信用を失います。

4. 作り方の4ステップ

ステップ1:選ばれた理由を集める

まず、実際にお客さんが選んでくれた理由を集めます。自分たちの強みを考える前に、ここから始めます。

  • 最近の注文・契約が決まったとき、お客さんは何を言っていたか
  • 「どうして当店に?」と聞いたときの答え
  • 口コミ・アンケート・お礼のメールの言葉

自分では当たり前だと思っていることが、お客さんには選ぶ理由になっていることがよくあります。

まだお客さんが少ない、これから始める場合は、見込みのお客さんの困りごと(問い合わせや相談で多い悩み)と、自社が実際に提供できる体制から材料を集めます。

ステップ2:他社が言っていることを並べる

同じ地域・同じ業種で、お客さんが比べそうな3〜5社のホームページを開き、トップに書いてある言葉を書き出します。「高品質」「安心」「丁寧」のような言葉が並ぶはずです。この並びが、避けるべき言葉の一覧になります。

ステップ3:空いている所を探す

ステップ1の理由のうち、ステップ2の一覧に出てこないものに印を付けます。そこが、他社が言っていない場所です。複数あれば、お客さんの得が大きいものを選びます。

ステップ4:一文にする

選んだ理由を、お客さんの言葉で一文にします。

(誰に)に、(どんな得)を、(どうやって)届ける

最初から名文を狙わず、まず箇条書きの一文で十分です。できたら、想定するお客さんに見せて、「何が得られると思ったか」「それが選ぶ理由になるか」を聞きます。

5. 言い換えの例

実在する企業の数字は使わず、業種ごとの「考え方の例」を示します。

  • 美容室:「予約の取りにくい人気店」→「小さな子どもを連れて来ても、キッズスペースで待たせずに終わる」
  • 税理士事務所:「親身な対応」→「決算の前に、月に一度、数字を一緒に見る」
  • 町の工務店:「地元で長年の実績」→「現場の担当が、最初の相談から引き渡しまで同じ人」

どれも、お客さんの得(時間・安心・手間)を具体的にした例です。実際にUSPとして使うには、お客さんにとって大事なことか、競合と違うかを、自分の地域・業種で確かめてください。

6. よくある失敗

  • 誰でも言える言葉にする:「高品質」「信頼」「丁寧」。他社と並べると消えます
  • 複数を詰め込む:あれもこれも書くと、何が選ぶ理由か分かりません。まず1つに絞ります
  • 証拠がない:できていないことを言うと、期待とのズレが不満になります
  • 作って終わりにする:USPは、ホームページや名刺に置いてはじめて役に立ちます

7. USPを置く場所

決めた一文は、お客さんが最初に目にする所に置きます。

  • ホームページのトップの一行目
  • 名刺・パンフレットの表面
  • SNSのプロフィール
  • 広告の見出し
  • 営業やお問い合わせでの最初の自己紹介

場所ごとに言い方を変えても構いませんが、中身は同じにすることが大切です。いろいろな場所で同じことを言われると、お客さんの頭に残ります。

8. 似ている言葉との違い

  • ベネフィット:お客さんが得られる良いこと
  • 差別化:競合との違いをつくること
  • USP:独自の得を、お客さんに向けて提案する一言

USPは、ベネフィットと差別化の両方を一文にまとめたものと考えると整理しやすくなります。競合の言うことが変わったら、定期的に見直しましょう。

9. よくある質問

USPとキャッチコピーは何が違いますか?

USPは「選ぶ理由」という中身で、キャッチコピーはそれを伝えるための言葉づかいです。中身が決まっていれば、コピーは何通りも作れます。順番は、USPが先です。詳しくは「小さな会社のキャッチコピーの作り方」の記事も参考にしてください。

競合が多い業界でもUSPは作れますか?

作れます。競合が多いほど、全員が言っている言葉は避け、お客さんが求める得と、競合との違いを具体的にする必要があります。「誰に」を絞る(子育て中の人・開業したばかりの人など)のも有効です。

1つに絞れません。どうすればいいですか?

いったん全部書き出し、「お客さんが実際にその理由で選んだ回数」が多いものを選びます。迷ったら、お客さんの声がいちばん多かったものからで構いません。

まとめ:認知の入口に置く一文から始める

USPは、特別なものではありません。お客さんがすでに選んでくれた理由のうち、他社が言っていないものを、一文にしたものです。

まずは、直近で決まった3件について「なぜうちだったのか」を書き出してみてください。その中に、うちだけの一文の材料があるはずです。

APOLLOSでは、認知を軸に「どんな言葉で、どこに置けば伝わるか」から整理するお手伝いをしています。USPの見つけ方から相談したい場合は、お問い合わせください。

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