ミッション・ビジョン・バリューを調べると、大きな会社の立派な言葉がたくさん出てきます。読んだあとで「うちの規模で、そこまで必要なのだろうか」と手が止まる人も多いはずです。
結論から言うと、従業員が数人から数十人の会社でも、3つをそれぞれ1行ずつ決めておくと役に立ちます。理由は、迷ったときの判断が早くなり、採用や営業で「うちはこういう会社です」を短く伝えられるからです。
この記事では、3つの違い、小さな会社向けの作り方、書き方の見本(架空の例)、使い道、よくある失敗をまとめます。言葉を飾ることより、決めたあとに使えるかを基準に進めます。
ミッション・ビジョン・バリューとは
3つは、会社の「向き」を言葉にしたものです。略してMVVと呼ばれます。
| 言葉 | 問い | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| ミッション(Mission) | なぜこの会社があるのか | 果たしたい使命・役割 |
| ビジョン(Vision) | どこへ向かうのか | 目指す先の姿 |
| バリュー(Value) | どう動くのか | 大切にする価値観・行動の基準 |
時間の向きで見ると、わかりやすくなります。ミッションは「今から変わらない軸」、ビジョンは「先にある景色」、バリューは「毎日の動き方」です。
経営理念・パーパス・行動指針との違い
似た言葉がいくつもあり、会社によって使い方が違います。厳密な定義が一つに決まっているわけではないので、社内で言葉の意味をそろえることのほうが大切です。目安としては次のとおりです。
- 経営理念:会社の考え方全体を指す広い言葉。MVVを含めて「理念」と呼ぶ会社もあります
- パーパス:社会の中での存在意義。ミッションとほぼ同じ意味で使われることも多いです
- 行動指針:バリューを、具体的な行動の形に書いたもの
小さな会社では、言葉の違いを細かく分けるより、「何のため・どこへ・どう動く」の3点が1枚で見えれば十分です。
小さな会社にも必要?決めておくと変わる3つの場面
大企業のものというイメージがありますが、人数が少ないほど、1人の判断が会社の印象を決めます。次の場面で効いてきます。
- 判断に迷ったとき:受けるか断るか、値引きするか、新しい商品を足すか。基準があると、社長に聞かなくても決められます
- 人が増えたとき:最初の1人が入るまでは、社長の頭の中だけで足ります。2人目以降は、言葉にしないと伝わりません
- 外に説明するとき:求人、会社案内、営業の最初の一言。毎回言い方が変わると、覚えてもらえません
逆に、全員が社長と同じ現場にいて、新しい人も入らず、取引も固定している間は、急いで作らなくても困りません。「いま困っていること」が1つでもあれば、作る合図です。
作る順番:バリュー、ミッション、ビジョンの順がおすすめ
教科書ではミッション、ビジョン、バリューの順に説明されることが多いですが、小さな会社ではすでにあるものから逆算するほうが、言葉が浮きません。
手順1:うまくいった仕事を3つ思い出す
お客さんに「ありがとう」と言われた仕事、自分でも「いい仕事だった」と思えた仕事を3つ書き出します。新しく考えるのではなく、実際にやってきたことを材料にします。
手順2:3つに共通する動き方を探す(バリュー)
3つの仕事に共通している動き方を探します。「見積りを早く出していた」「断るときも代わりの案を出していた」など、行動で見つかるはずです。これがバリューの材料です。多くても3つまでに絞ります。
手順3:その動き方で、誰のどんな困りごとを解決しているか(ミッション)
共通の動き方が、誰のどんな困りごとに効いていたかを一文にします。「〇〇な人が、△△で困らないようにする」の形にすると、短くなります。
手順4:3年後に、何が当たり前になっていたらうれしいか(ビジョン)
3年先に、お客さんや社員の間で何が当たり前になっていたらうれしいかを書きます。数字の目標ではなく、景色で書きます。数字は、別に事業計画で持てば足ります。
手順5:声に出して、1行にする
書いた文を声に出して読み、途中で息が続かない文は長すぎます。1行・30文字前後を目安に削ります。
書き方の見本(架空の例)
実在の会社ではなく、考え方を見せるための例です。住宅街で営業する、従業員8人の家電修理店を想定しました。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| ミッション | 古い家電でも、あきらめずに直す |
| ビジョン | 「困ったらあの店」と町内で言われる |
| バリュー① | 見積りは当日中に返す |
| バリュー② | 直せないときも理由を説明する |
| バリュー③ | 修理後の使い方まで伝える |
良い点は、バリューが「行動」で書いてあることです。「誠実」「お客さま第一」のような言葉は、誰が見ても反対できないぶん、現場では何をすればよいかが決まりません。「見積りは当日中に返す」なら、できたかどうかが確かめられます。
言葉の見直しチェック
書いた文を、次の3つで確かめます。
- 他の会社の名前に入れ替えても通じるなら、まだ一般的すぎる
- 社員が「それはうちらしくない」と言える基準になっているか
- 断る理由として使えるか(「うちのバリューと合わないので」)
決めたあとの使い道
作って終わりになるのが、最もよくある失敗です。次の3か所に入れるところまでを、作る作業に含めます。
- サイトの会社概要と採用ページ:ミッションを冒頭に、バリューは行動の例と一緒に
- 名刺の裏・会社案内の1ページ目:1行だけ。長い説明は不要です
- 朝礼・ミーティング:週に1回、バリューを使った事例を1つだけ共有します
使うほど、言葉の細かい違和感に気づきます。年に1回、「この言葉はまだ合っているか」を見直せば十分です。
よくある失敗
| 失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 立派な言葉を並べた | 誰も覚えられず、使われない | 1行・30文字前後に削る |
| 社長ひとりで決めた | 社員が自分ごとにできない | 材料の仕事の振り返りは社員にも聞く |
| バリューが多すぎる | 判断の基準にならない | 3つまでに絞る |
| 数値目標を入れた | 毎年書き換えが必要になる | 数字は事業計画に分ける |
| 作ったあと見ない | ただの飾りになる | 3か所に入れて週1で使う |
よくある質問
Q. 3つ全部を作らないといけませんか?
いいえ。最初はミッションだけ、またはバリューだけでも役に立ちます。いま困っていることに近いものから1つ作り、必要になったら足します。
Q. ブランドコンセプトとは何が違いますか?
ブランドコンセプトは「お客さんから見て、うちは何を約束する店か」を決めるものです。MVVは「会社の内側の向きと動き方」を決めるものです。両方あると、外に伝えることと中の動きがそろいます。
Q. 社員が少ないので、決めてもすぐ変わりそうです。
変わって構いません。会社の規模や事業が変わるたびに見直すのは、自然なことです。大事なのは、いまの会社に合っていることです。
Q. 外部の人に頼んだほうがよいですか?
材料になる「うまくいった仕事」は社内にしかありません。外部の力が必要なのは、言葉を削る作業や、サイト・名刺に載せる形にするところです。
まとめ
ミッション・ビジョン・バリューは、立派な飾りではなく、迷ったときの物差しです。
- ミッション=なぜ、ビジョン=どこへ、バリュー=どう動く。それぞれ1行
- 材料は、いままでうまくいった仕事3つ
- バリューは「行動」で書き、多くても3つまで
- 作ったら、サイト・名刺・朝礼の3か所に入れる
まずは、最近「いい仕事だった」と思えた仕事を3つ、書き出すところから始めてください。
関連記事(内部リンク)
- ブランドコンセプトとは?/ブランドガイドラインとは?/ペルソナとは?/USPとは?/会社名の決め方