会社案内を作ろうとして、まず他社の見本を集める。会社概要、理念、沿革、代表あいさつ、事業紹介、社員紹介。項目を並べていくと、あっという間に16ページになる。

けれど、できあがった冊子が営業の場で使われないまま引き出しに眠ることがある。その場合、原因は作り方の技術よりも、作る前の決めごとにあることが少なくない。

この記事では、小さな会社が会社案内を作るときの順番を、決めること、削ること、役割を分けること、の3点で整理する。

会社案内とは(会社概要・サービス資料との違い)

会社案内は、会社のことをはじめて知る人に「どんな会社か」を伝え、安心して次の一歩(問い合わせ・面談・応募)に進んでもらうための資料。

似た資料との違いは次のとおり。

  • 会社概要:社名・所在地・設立・資本金・代表者など、企業の基本情報をまとめたもの。1枚の場合もあれば、数ページの場合もある。取引先の登録や審査で求められることがある。
  • サービス資料:商品やサービスの中身を説明する資料。買う前の比較に使われる。
  • 会社案内:会社そのものの考え方・強み・人柄を伝える資料。パンフレット(冊子・リーフレット)の用途の一つで、会社概要とサービス資料の要点を含みつつ、「この会社に頼んで大丈夫か」に答える。

全部を1冊に詰め込むと、どの目的にも中途半端になる。まず、会社案内に何を担わせるかを決める。

作る前に決める3つ

項目を考える前に、次の3つを文章にする。1行ずつでよい。

1. 誰に渡すか

営業で初めて会う相手なのか、採用で応募を検討している学生や転職者なのか、取引先の紹介で見る人なのか。相手が違えば、知りたいことが違う。

  • 営業で渡す:何ができるか、どんな会社が使っているか、頼むとどうなるか
  • 採用で渡す:どんな仕事か、どんな人と働くか、何を大事にしている会社か

両方を1冊で済ませたくなるが、読み手が違うと知りたいことも違う。まずどちらを主にするかを決め、必要なら採用用は別に分けて作る選択肢もある。

2. 何年使うか

意外と決めていない会社が多い。ここが決まると、載せてよい内容が変わる。

  • 長く使う:社員の顔ぶれ・細かい数字・価格など、変わりやすい情報は少なめにする。理念・強み・仕事の進め方など、変わりにくい内容を中心にする。数字を載せるなら「2026年4月時点」のように基準日を書いておく。
  • 短い周期で作り替える:数字や事例を入れやすい。そのかわり、作り替える手間と費用を見込む。

変わりやすい情報は、冊子ではなくホームページに任せる。これが次の「役割分担」につながる。

3. 渡したあとに、相手にどうしてほしいか

問い合わせ、見積もりの相談、面談の申し込み、資料請求、応募。最後の1ページが、この行動につながっているかを確認する。連絡先が最後に小さく載っているだけでは、行動は起きにくい。誰に・どの方法で・何をすればよいかを、はっきり書く。

載せる項目と、小さな会社が削ってよい項目

一般的な会社案内には、次の項目が並ぶことが多い。

  • 会社概要(社名・所在地・設立・代表者・事業内容)
  • 理念・ビジョン
  • 代表あいさつ
  • 沿革
  • 事業・サービス紹介
  • 強み・選ばれる理由
  • 事例・取引先
  • 社員紹介・オフィス紹介
  • アクセス・連絡先

すべてを入れようとすると、小さな会社ほど薄くなる。前の章で決めた「誰に・何年・どうしてほしいか」に照らして、次のように絞る。

必ず入れる
– 事業・サービス紹介:何をしている会社かが1分で分かること
– 強み・選ばれる理由:他社ではなくこの会社に頼む理由を、事実で書く
– 会社概要と連絡先:信用の確認と、次の行動の入口

目的に合えば入れる
– 事例:掲載の許可が取れているものだけ。許可がない場合は、取引先が特定されない形で「どんな相談に応えたか」を書く方法もあるが、匿名にしても契約や守秘義務による制限は残る。公開してよい範囲を、契約書や取引先に確認してから載せる
– 社員紹介:採用用なら厚く、営業用なら短く

削ってよい(または短くする)
– 沿革:年表が長いだけなら、3〜5行の「これまでの歩み」に要約する
– 代表あいさつ:理念や強みと内容が重なるなら、理念のページに統合する
– 数字の羅列:売上・従業員数など、営業の判断に関係ないものは載せない

小さな会社の会社案内は、ページ数の少なさが弱みになるとは限らない。要点が分かる短い冊子のほうが、長くて読み終わらないものより使いやすい。

8ページの構成例

営業用に絞った場合の一例。表紙・裏表紙を含めて8ページ(A4の中綴じなど)で組む。

  1. 表紙:社名・ロゴ・一言(何をしている会社か)
  2. ごあいさつ・理念:代表の言葉は短く。理念と重なるなら1ページにまとめる
  3. 事業・サービス紹介:何をしている会社かを1分で伝える。図や流れで見せる
  4. 強み・選ばれる理由:事実で書く。「早い」ではなく「何日で、どう進めるか」
  5. 仕事の進め方:相談から納品までの流れ。頼んだ後が想像できると安心される
  6. 事例(許可があるもののみ):相談内容と、どう応えたか
  7. 会社概要・これまでの歩み:基本情報は表で。沿革は3〜5行に要約
  8. 裏表紙・連絡先:問い合わせ先と、次にしてほしい行動(相談・見積もり・面談の申し込み)を大きく

例えば従業員10人ほどの小さな制作会社なら、沿革の年表は短くして、対応できる範囲と進め方のページを残す。営業で聞かれるのは「どこまで頼めるか」「どう進むか」であることが多いからだ。

紙・PDF・ホームページの役割分担

会社案内を紙で作るかPDFで作るか、ホームページで済ませるか。迷う場合は、役割で分ける。

  • 紙の冊子:対面で渡す場面向き。商談の場で手渡し、あとで見返してもらえる。変わりにくい内容に絞る。
  • PDF:メールで送る・オンライン商談で画面共有する場面向き。印刷するより早く更新できる。URLからも配れる。
  • ホームページ:検索で見つけた人が最初に見る場所。事例・お知らせ・価格など、変わりやすい情報はここに置く。

会社名・事業内容・連絡先などの基本情報は3つでそろえる。そのうえで、詳しさと更新のしかたを分ける。冊子には変わりにくい要点、ホームページには最新の情報、PDFはその中間、と考えると、更新のたびに全部を直す手間が減る。

作り方の流れ(自社で作る場合/頼む場合)

基本の流れは、自社で作る場合も、制作会社に頼む場合も同じ。

  1. 目的と相手を決める(上の3つの決めごと)
  2. 載せる項目を絞る:項目ごとに、載せる理由を1行で書く
  3. 素材を集める:事業内容の説明、強みの根拠となる事実、写真、ロゴ、連絡先
  4. 構成案(ページの順番)を作る:表紙→何をしている会社か→強み→事例→会社概要→連絡先、の順を基本に
  5. 文章を書く:1ページ1メッセージ。見出しだけ読んでも要点が分かるようにする
  6. デザイン・レイアウト
  7. 確認(刷る前の確認表は後述)
  8. 印刷・公開・配布

自社で作る場合

文章と素材づくりは自社でできる。レイアウトはテンプレートのある文書作成ソフトでも形になる。向いているのは、ページ数が少なく、更新も社内で回せる場合。

自社で作るときに見落としやすい点:
– 印刷会社に出すなら、先に入稿条件(サイズ・塗り足し・色の指定・データ形式)を確認してからレイアウトを始める
– 画面で見て読める文字でも、印刷すると小さいことがある。実寸で出力して文字の大きさを確かめる
– PDFやホームページに載せるQRコード・リンクは、公開前に実際に開いて動作を確かめる

頼む場合

制作会社に頼むと、構成の相談・文章の整理・デザイン・印刷の手配までまとめて任せられる。向いているのは、会社の見せ方そのものを整理したいときや、採用・営業で会社の印象が成果に直結するとき。

頼む場合でも、1〜3の決めごとは自社で済ませてから相談すると、見積もりも話も早い。決まっていないまま依頼すると、制作側が聞き取りから始めることになり、時間も費用もかかりやすい。

頼む場合の費用の考え方

費用は、会社案内の仕様と工程の範囲で大きく変わる。金額は制作会社ごとに違うため、ここでは見積もりを比べるときの観点を整理する。

見積もりで確認する項目:

  • どこまで含まれているか:構成・文章・撮影・デザイン・印刷のうち、含まれる工程はどれか
  • ページ数と仕様:ページ数、サイズ、綴じ方、用紙、色数
  • 部数と印刷方式:オフセット印刷では製版などの固定費がかかるため、部数が少ないと1部あたりの単価が上がりやすい。製版が要らないオンデマンド印刷なら、少部数でも組みやすい
  • 修正の回数:何回まで含まれるか、超えた場合の扱い
  • 納品後の更新:データは受け取れるか、次回の更新を同じ会社に頼む前提か

安い・高いだけで比べず、含まれる範囲をそろえて比べる。

よくある失敗と、刷る前の確認表

よくある失敗

  • 項目を埋めて満足する:他社の見本どおりに作り、自社の強みが埋もれる
  • 相手が曖昧:誰に渡すかが決まらず、どの読み手にも響かない
  • 情報が古くなる:役員・住所・数字が変わり、配れなくなる
  • 最後の行動が弱い:読み終えても、次に何をすればよいか分からない
  • 写真と文章が合っていない:素材の寄せ集めで、会社の印象がばらつく

刷る前の確認表

印刷や公開の前に、次を目で追って確認する。

  • 社名の表記(株式会社の位置・英字表記・読み)が全ページで統一されている
  • 所在地・電話番号・メール・URLが最新で、正しい
  • 数字(設立年・従業員数・実績)に、根拠となる資料がある
  • 掲載した事例・写真・社員の顔に、掲載の許可がある
  • ロゴの色が、データの指定どおりに出ている
  • 誤字・脱字、人名の漢字(旧字体など)が合っている
  • 最後のページの連絡先が、渡したあとの行動につながっている

印刷した冊子は直せない。確認は、データのうちに、自分以外の人の目でも1回通す。

よくある質問

Q. 何ページくらいが適切?
決まったページ数はない。載せる項目を絞った結果として決まるもの。前の章の8ページは一例で、ページ数を先に決めるより、「相手が最後まで読めるか」で考える。

Q. 会社案内とパンフレットは何が違う?
パンフレットは冊子やリーフレットなど資料の形を広く指す言葉で、会社案内もその一つ。商品やサービスをパンフレットと呼ぶことも多く、呼び方は会社によって混ざる。名前より、何を伝える資料かという目的で整理するとよい。

Q. ホームページがあれば会社案内は要らない?
検索で見つけた人にはホームページが入口になる。ただ、対面の商談や採用の説明会など、手渡しで残る場面では、紙やPDFが役に立つ。役割分担で考える。

Q. 事例を載せる許可が取れない場合は?
取引先名を伏せ、「どんな相談に、どう応えたか」を一般化して書く方法がある。ただし匿名にしても、契約や守秘義務による制限は残る。公開してよい範囲を契約書や取引先に確認し、許可なく社名・ロゴ・写真は載せない。

まとめ

  • 会社案内は、項目を埋める資料ではない。誰に、何年使い、渡したあと何をしてほしいかを先に決める
  • 小さな会社は、足すより削る。変わりやすい情報はホームページに任せる
  • 紙・PDF・ホームページは、同じ内容を入れず役割で分ける
  • 頼む場合も、決めごとを済ませてから相談すると、話も見積もりも早い