ポジショニングマップを作ろうとして、「価格×品質」の図を描いたところで手が止まった。そんな経験はないでしょうか。軸を何にすればよいか分からず、結局、自社を右上に置いて終わってしまう。よくある失敗です。
結論から言うと、ポジショニングマップは軸を決める前に、お客さんが実際に比べている相手を書き出すと、30分でまず形にできます。大手の解説は分析の手法を詳しく説明しますが、小さな会社に必要なのは、紙とペンで作れて、明日からの発信に使える図です。
この記事では、意味と似た図との違い、作る前に用意するもの、30分で作る5つの手順、軸の決め方の基準、よくある失敗、作ったあとの使い方、よくある質問をまとめます。
ポジショニングマップとは
ポジショニングマップは、縦と横の2本の軸の上に、自社と競合の位置を置いて、違いを見える形にした図です。マーケティングの考え方であるSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)のうち、「ポジショニング」を図にしたものです。
似た言葉に「知覚マップ」があります。こちらは、お客さんがどう感じているかのアンケート結果を元に描く図です。ポジショニングマップは、まず社内の見立てで描き、あとからお客さんの声で確かめる、という使い方が多くなります。
| 図 | 何を置くか | 主な使いどころ |
|---|---|---|
| ポジショニングマップ | 自社と競合の位置(社内の見立て) | 打ち出し方を決める |
| 知覚マップ | お客さんが感じている位置(調査結果) | 見立てと実際のずれを知る |
| 競合比較表 | 機能・価格などの項目ごとの有無 | 細かい違いを並べる |
図を描くこと自体が目的ではありません。「うちは誰と比べられていて、どこなら選ばれやすいか」を一目で決めるための道具です。
作る前に用意するもの
大きな準備は要りません。次の3つがあれば始められます。
- 紙とペン(付箋があると並べ替えが楽です)
- お客さんが比べている会社を3社(思いつく競合ではなく、「他にも見ましたか」と聞いて出た名前)
- 直近のお客さんの声を3つ(「なぜうちにしたか」「何と迷ったか」の言葉)
ここで大切なのは、競合を自社の側から決めないことです。自社が競合だと思っている相手と、お客さんが実際に比べている相手は、ずれていることがよくあります。たとえば工務店なら、同じ地域の工務店だけでなく、大手ハウスメーカーや、リフォーム専門の会社と比べられているかもしれません。
お客さんの声が手元にない場合は、問い合わせのメールや、商談のメモを見返します。3つ集まらなければ、今週お客さん3人に聞くところから始めましょう。
30分で作る5つの手順
手順1 お客さんが選ぶ理由を5つ書く(5分)
付箋に1枚ずつ、お客さんが会社を選ぶ理由を書きます。価格、近さ、早さ、安心感、雰囲気、専門性などが出てくるはずです。自社の言葉ではなく、お客さんの言葉で書いてください。「高品質」ではなく、「仕上がりがきれい」「説明が分かりやすい」のように、お客さんが口にした表現を使います。
手順2 いちばん効いている理由を2つ選ぶ(5分)
5枚の中から、実際の選ぶ・選ばないに最も影響している理由を2つに絞ります。迷ったら、直近のお客さんの声3つを見て、何度も出てくる言葉を選びます。この2つが、縦軸と横軸の候補です。
手順3 縦横の軸にして、競合3社を置く(10分)
選んだ2つを縦と横の軸にします。それぞれの軸の両端に、「早い/ていねい」「近い/遠くても専門」のような対になる言葉を書きます。次に、用意した競合3社を置きます。根拠は、競合のホームページの打ち出しや、実際の対応の様子です。感覚で置くより、「このページにこう書いてあるから」と言える位置に置くほうが、あとで見返したときに使えます。
手順4 自社を正直に置く(5分)
自社を置きます。ここで、希望の位置ではなく、今、お客さんからどう見えているかで置きます。右上に置きたくなる気持ちは自然ですが、そこが空いているように見えるのは、誰もそこで成り立たせていないからかもしれません。
手順5 空いている所と、行ける所が重なる場所に丸をつける(5分)
最後に、図の中で競合がいない場所を探します。ただし、空いているだけでは足りません。自社の強みで本当に行ける場所でなければ、絵に描いた餅になります。空いている所と、自社が実際にやれる所が重なる場所に丸をつけます。それが、これから打ち出す方向の候補です。
軸の決め方で失敗しない3つの基準
手順2で迷うのは、ほとんどが軸の選び方です。次の3つの基準で確かめてください。
基準1 片方が上がると片方も上がる軸は避ける
価格と品質のように、一方が高いと他方も高くなりやすい組み合わせは、点が右上と左下の対角線に並びやすくなります。差が見えにくく、図の意味が薄れます。関係の薄い2つ(たとえば「対応の早さ」と「専門の深さ」)を選ぶと、点が散らばって違いが見えます。
基準2 自社が言いたいことではなく、お客さんが比べていることにする
「当社のこだわり」を軸にしても、お客さんがそこで比べていなければ、図は役に立ちません。手順1で集めたお客さんの言葉に軸を合わせます。
基準3 競合が全員同じ所に固まっている軸を探す
軸を決めて点を置いたとき、競合が一か所に固まっていれば、その軸は「みんなが同じことを言っている」場所です。その固まりから離れた場所に、選ばれる余地があります。逆に、競合がきれいに散らばる軸は、すでに差がはっきりしている軸です。
やりがちな失敗例
- 自社だけ右上に置く:希望を描いてしまうパターンです。今の位置で描き直しましょう。
- 軸が社内用語になっている:「提案力」「総合力」のような言葉は、お客さんが比べる軸ではありません。具体的な場面の言葉に直します。
- 作って終わりで、ホームページに反映しない:図は決めるための道具です。決めた方向が発信に出ていなければ、作らなかったのと同じです。
- 競合を知っている会社だけにする:お客さんが実際に比べている相手を聞かずに、思いつく名前だけで置くと、見立てがずれます。
作ったあとの使い方
丸をつけた場所が決まったら、次の3か所に反映します。
- ホームページの1行目:トップの見出しに、選ばれる理由を一言で書く
- 名刺・会社案内:初対面の相手に伝える一文にする
- 営業の一言:「他社さんとの違いは?」と聞かれたときの答えにする
打ち出す一言を決める作業は、USP(独自の強み)の作り方や、ブランドコンセプトの整理とつながります。図で方向を決め、言葉にするところまでを一連で進めると、発信がぶれにくくなります。
よくある質問
Q. 競合がいない場合はどうしますか。
お客さんは、競合以外のもの(自社でやる、何もしない、別の方法で済ませる)と比べていることがあります。「今、お客さんは何で代わりにしているか」を競合として置いてください。
Q. 3軸にしてもよいですか。
小さな会社の最初の1枚では、おすすめしません。紙の上では2軸が見やすく、3軸にすると読み取りに時間がかかります。軸を変えて図を複数作るほうが、使いやすくなります。
Q. 何年ごとに見直しますか。
市場や競合の打ち出しが変わったとき、新しいサービスを始めるとき、お客さんの声の傾向が変わったと感じたときです。目安として年に一度、お客さんの声を3つ集め直して確かめると、ずれに気づけます。
まとめ
ポジショニングマップは、きれいな図を作ることが目的ではありません。お客さんが比べている相手と、選ばれる理由を言葉にして、打ち出す方向を決めるための道具です。
- 軸を決める前に、お客さんが比べている会社を3社書く
- 軸は、関係の薄い2つ。お客さんの言葉で選ぶ
- 自社は今の位置に置き、空いている所と行ける所が重なる場所に丸をつける
- 決めた方向は、ホームページの1行目・名刺・営業の一言に反映する
次の一歩は、今週、お客さん3人に「うちを選んだ理由」と「他に見た会社」を聞くことです。その3つの答えが、そのまま最初のマップの材料になります。