リブランディングと聞くと、ロゴを新しくして、ホームページを作り直して、という大きな話を思い浮かべるかもしれません。ところが社員数人から数十人の会社やお店では、全部を変えるとお客さんが「別の店になった」と感じて離れてしまうことがあります。

この記事は、小さな会社・お店が予算を抑えてリブランディングを進めるときの考え方と手順をまとめたものです。ポイントは1つで、何を変えるかより先に、何を変えないかを決めることです。

結論:先に「変えないもの」を決める

リブランディングは、お客さんや社員が持っているイメージを意図して作り直すことです。作り直すということは、残すものがあるということでもあります。

小さな会社が失敗しやすいのは、見た目(ロゴ・色・サイト)から手をつけて、そのあとで「そもそも何が良さだったのか」が分からなくなるパターンです。順番は次のとおりにします。

  1. 変えないもの(今のお客さんが好きな理由・譲れない考え方)を決める
  2. 変えるもの(今のズレを生んでいる所)を決める
  3. 言葉を整える
  4. 見た目を整える
  5. 知らせる

リブランディングとは:ブランディング・リニューアルとの違い

  • ブランディング:どう思われたいかを決めて、一貫して伝え続ける活動全体
  • リブランディング:すでにあるブランドのイメージを、状況の変化に合わせて作り直すこと
  • リニューアル:サイトや店舗、パッケージなど「物の見た目や作り」を新しくすること

リニューアルはリブランディングの手段の1つです。見た目の変更が中心になるリブランディングもありますが、大切なのは、狙うイメージと実際の商品・対応が一致していることです。すべてを変える必要はありません。

やるべきか迷ったときのサイン

売上が落ちてからでは遅いので、売上より先に出やすい次の5つを見ます。

  1. 問い合わせの質:来てほしい相手と違う相談が増えた
  2. 値引きの依頼:価値ではなく値段だけで比べられている
  3. 採用の応募:会社に合う人が来ない、辞退が多い
  4. 説明のばらつき:社員によって、会社の説明が違う
  5. 客層のずれ:今のお客さんが、これから増やしたい相手と違う

当てはまる項目があれば、数にかかわらず、原因が商品・価格・集客・伝え方のどこにあるかを確認します。そこが分かってから、変える範囲を決めます。

変えるもの・変えないものの仕分け表

次の6項目を、「変える/変えない/迷う」に分けて紙に書き出します。

項目 例 小さな会社の目安
理念・考え方 何のための仕事か 原則として変えない
名前(社名・店名) 呼ばれている名前 変えるのは最後の手段
商品・サービス 売っている物 ズレの原因なら変える
見た目 ロゴ・色・サイト 変えやすい。ただし順番は後
言葉 説明文・キャッチコピー 最初に直す価値が高い
売り場 店舗・サイト・SNS 届けたい相手に合わせる

名前は特に慎重にします。社名・店名を変えると、検索でも見つけてもらいにくくなり、取引先への連絡や登記の手続きも発生します。株式会社が商号を変更したときは、会社法915条で、変更の効力が生じた日から2週間以内に登記の申請が必要とされています(様式や費用は管轄の法務局で確認してください)。なお、店名やブランド名だけを変える場合は、会社の商号変更の登記が必要とは限りません。

小さな会社の進め方5ステップ

1. 現状を聞き取る

社内の数人と、できれば既存のお客さん数人に「うちの良いところは何か」「何で選んだか」を聞きます。同じ言葉が何度も出てくれば、それが残すべき強みです。

2. 変えないものを決める

聞き取りで繰り返し出た言葉を3つまでに絞り、「ここは変えない」と社内で共有します。

3. 言葉を整える

誰に、何を、どんな理由で届けるかを、2〜3文で言えるようにします。ホームページ・名刺・営業の説明が、同じ言い方になるようそろえます。

4. 見た目を整える

言葉が決まってから、ロゴ・色・サイトを整えます。ロゴの形そのものを変えなくても、使い方のルール(余白・色・並べ方)をそろえるだけで印象が変わることがあります。

5. 知らせ方を決める

既存のお客さん、取引先、採用の応募者、検索で来る人、それぞれにどう知らせるかを決めます。

変えるタイミングの切り替え表

予算が限られるときは、全部を一度に変えず、次のように分けると進めやすくなります。担当・期限・費用を書き込んで使ってください。

項目 今すぐ変える 在庫や契約が切れたら変える 当面維持する
サイト・SNSのプロフィール ○(費用が小さい)
名刺・パンフレット ○(刷り直しのタイミング)
包装・袋・シール ○(在庫がなくなってから)
看板・店舗の外装 ○(予算が出るまで)

費用の分け方

費用は次の3つに分けて考えると、削る場所を選べます。

  • 考える:現状の整理・方針づくり
  • 形にする:ロゴ・サイト・資料などの制作
  • 届ける:告知、印刷物の入れ替え、広告

小さな会社では、「考える」を省いて「形にする」だけに予算をかけると、あとで作り直しになりがちです。相場や内訳の考え方は、ブランディング費用の考え方の記事で詳しくまとめています。

よくある失敗

  • ロゴだけ変えて終わる:見た目が変わっても、言葉・商品・対応が同じなら、お客さんの受け取り方は変わらない
  • 社内に伝わらない:社員が新しい方針を説明できず、現場の言葉が元のまま
  • お客さんへの知らせ忘れ:既存のお客さんが、変更を知らないまま離れる
  • 数字を見ない:変えたあとの反応を確かめず、うまくいったか分からない

変えたあとの確かめ方

変更前の数字を先に記録し、変更後は毎月見ます。3か月は最初の振り返りの目安です。次の3つを見ます。

  1. 指名検索:社名・店名を含む検索の表示回数(Search Consoleで確認できます)。名前を変えたときは、旧名と新名の両方を見ます
  2. 問い合わせの出どころと質:来てほしい相手からの問い合わせが増えたか(割合だけでなく件数も見ます)
  3. 既存のお客さんの反応:変更後に離れたお客さんがいないか、直接聞く

数字が動かなければ、見た目ではなく「言葉」と「知らせ方」に戻って見直します。

既存のお客さんへの知らせ文の例

変更を知らせるときは、実際に変わらないことだけを書きます。

〇月〇日から、店名を「△△」に変更します。運営者・商品・サービスの内容、保証は変わりません。これまでどおりご利用いただけます。

変わる点(名前・連絡先・支払い先など)がある場合は、先に分かるように別に書きます。

よくある質問

Q. ロゴだけ変えても、リブランディングになりますか?
ロゴ変更が中心になる場合もあります。ただ、ロゴだけ新しくしても、言葉・商品・対応が同じなら、お客さんの受け取り方は変わりにくいのが実際です。

Q. 社名は変えたほうがいいですか?
ズレの原因が社名そのものでない限り、変えないことをおすすめします。変える場合は、新しい名前が他社の商標とぶつからないか、事前に調べます。同じ・似た商品やサービスで、同じ・似た商標が競合する場合は、原則として先に出願した人が優先されます(先願主義)。INPITが提供するJ-PlatPatで無料で調べられますが、検索で見つからなくても、使える・登録できる保証にはなりません。迷うときは弁理士に相談します。

Q. どのくらいの期間がかかりますか?
聞き取りから方針決定までを1〜2か月、制作と告知を数か月、というのが一例です。会社の規模や変える範囲で大きく変わります。

まとめ

  • リブランディングは、変えるものより先に「変えないもの」を決める
  • 順番は、変えないもの→言葉→見た目→知らせ方
  • 変えたあとは、3か月かけて検索・問い合わせ・既存客の反応を見る

アポロスでは、現状の聞き取りから方針づくり、言葉と見た目の整理まで、小さな会社向けに進めています。まず何から手をつけるか整理したい段階でも、お気軽にご相談ください。