同じような商品なのに、なぜかあの会社にお願いしたい。値段を聞く前から、候補に入っている。そんな会社には、売上の数字には出てこない「名前の力」があります。この力を、マーケティングの世界ではブランドエクイティと呼びます。

結論から言うと、ブランドエクイティは大企業だけの話ではありません。お客さんが会社や商品の名前を聞いたときに思い浮かべることが、そのまま選ばれる理由になるからです。小さな会社でも、いまの状態を見て、足りない所から高めることができます。

この記事では、ブランドエクイティの意味、持つと何が変わるか、代表的な2つの考え方(アーカーとケラー)、マイナスに働くとき、そして小さな会社が今日からできる見方と高める順番をまとめます。

ブランドエクイティとは

ブランドエクイティとは、ブランド(会社・商品・サービスの名前やマーク)が持っている、売上や選ばれやすさにつながる無形の資産価値のことです。エクイティ(equity)は「資産」「持ち分」という意味で、ブランド資産と訳されることもあります。

建物や設備のように帳簿に載る資産ではありません。同じ品質・同じ値段の商品が2つ並んでいて、片方だけが選ばれるなら、その差を生んでいるのがブランドエクイティです。

ブランドエクイティという言葉を広めたのは、アメリカの経営学者デービッド・アーカーです。ブランドの価値を、認知度やお客さんの思い込みまで含めた「資産」として整理しました。そのあと、同じく経営学者のケビン・ケラーが、お客さんの頭の中でブランドがどう育つかという見方(顧客ベースのブランドエクイティ)を示しています。

ブランドエクイティを持つと何が変わるか

名前に力がある会社では、主に3つのことが変わります。

1. 値段だけで比べられにくくなる
「安いから」ではなく「あの会社だから」と選ばれるので、相見積もりで価格だけを競う場面が減ります。

2. 指名で問い合わせが来る
探している途中で見つけてもらうのではなく、最初から名前を挙げて声がかかります。営業や広告に頼る度合いが下がります。

3. 一度の取引が次につながる
満足した人が、また同じ会社を選びます。知り合いに紹介することもあります。新しいお客さんを探し続ける負担が軽くなります。

どれも、売上が上がってから分かる結果です。ブランドエクイティは「原因」の側にあり、数字になって現れるまでに時間がかかります。だからこそ、見ないまま過ごしてしまいやすい資産です。

5つの要素(アーカーモデル)を小さな会社の言葉で

アーカーは、ブランドエクイティを次の5つの要素で説明しました。専門用語のままだと遠く感じるので、小さな会社の言葉に置き換えます。

要素 一言でいうと 小さな会社で言い換えると
ブランド認知 知られているか 業界や地域で、名前を言って通じるか
ブランド連想 何を思い浮かべられるか 名前を聞いて「〇〇の会社」と一言で出てくるか
知覚品質 良いと思われているか 実際の品質ではなく、お客さんが「いい仕事をする」と感じているか
ブランドロイヤルティ 繰り返し選ばれるか リピート、紹介、長い付き合いがあるか
その他の資産 守れる強みがあるか 商標、独自の仕組み、取引先との関係など

見落とされやすいのは連想です。名前が知られていても、何の会社か一言で出てこなければ、選ぶ理由になりません。逆に、知られている数が少なくても、「あの分野ならあそこ」と思い出される会社は指名で選ばれます。

4段のピラミッド(ケラー)で「いまどこか」を見る

ケラーは、お客さんの頭の中でブランドが育つ順番を、4つの段で示しました。下から順に積み上がります。

  1. 認知:まず名前を知ってもらう。どんな場面で思い出されるかも含む
  2. 意味づけ:何をする会社か、どんな特徴かが伝わる
  3. 反応:「信頼できる」「好きだ」と判断し、感じてもらう
  4. 共鳴:お客さんがそのブランドに愛着を持ち、繰り返し選び、人にも話す

ここで大切なのは、上の段は下の段が固まっていないと育たないことです。認知が足りないのに共鳴を狙っても届きません。逆に、認知はあるのに意味づけが弱い会社は、知られていても選ばれません。

自社がどの段で止まっているかを見ると、次にやることが分かります。名前が通じないなら一段目、通じるのに依頼につながらないなら二段目、というように、足りない段から手を入れるのが近道です。

逆に働くとき:マイナスのブランドエクイティ

ブランドエクイティはいつもプラスとは限りません。悪い評判や不信感が名前に結びついていると、名前を聞いただけで候補から外されるマイナスのブランドエクイティになります。

小さな会社でも、次のような場面で起こります。

  • 納期や連絡の遅れが続き、「あそこは遅い」と同じ業界で共有される
  • 説明と実際の仕事が違うと感じた人が、周りに話す
  • 名前だけは知られているが、悪い印象のほうが先に出てくる

マイナスは、プラスよりも早く広がります。しかも本人には届きにくい形で、静かに候補から外されます。新しく名前を広げる前に、いまの名前がどう思われているかを知ることが先です。

測り方:大企業の方法と、小さな会社が今日できる見方

大企業は、調査会社を使った認知度調査や、財務情報から算出する方法でブランドエクイティを測ります。顧客満足度を測る「NPS」のように、「この会社を知り合いに勧めたいか」を聞く指標もよく使われます。ただ、どれも費用と手間がかかり、小さな会社にはやや重いのが実際です。

そこで、小さな会社向けには次の3つの見方を勧めます。数字を作る必要はありません。実際のお客さんの言葉を集めることが目的です。

1. お客さんに3つ聞く
最近契約してくれた人や、長く付き合いのある人に、直接聞きます。

  • うちを知ったきっかけは何でしたか
  • うちを一言で言うと、どんな会社ですか
  • ほかの会社ではなく、うちを選んだ理由は何ですか

2問目の答えがばらばらなら、連想がまだ定まっていません。3問目に「安いから」が多いなら、価格以外の理由が伝わっていません。

2. 「入れ替え」を考える
もしお客さんが明日別の会社に乗り換えるとしたら、何が面倒で、何が惜しいか。手間・信頼・付き合いの長さなどを書き出します。乗り換えが簡単なら、名前の力はまだ弱いと考えられます。

3. 検索と口コミを自分で見る
会社名で検索して、何が出てくるかを確認します。口コミや紹介文があれば、読んで印象の偏りを見ます。マイナスが見つかったら、それが最初に直す対象です。

高めるときの順番

ブランドエクイティを高める方法は、広告を出す、SNSを始める、ロゴを変えるなど、いくつも思いつきます。ただ、認知を広げるより先に決めることがあります。

  1. 何の会社かを一言で決める:連想をそろえる土台になる。ここが曖昧なまま広げても、覚えられない
  2. 約束を決めて守る:品質・納期・対応で、お客さんに何を約束するか。守れた回数が信頼になる
  3. 見た目と言葉をそろえる:ロゴ、サイト、名刺、提案書が同じ印象を出す。バラバラだと、同じ会社と気づかれない
  4. そのうえで、知られる機会を増やす:発信、紹介、事例の公開。順番が整ってから広げると、届いた人が選びやすい

名前を広げる前に、一言・約束・見た目の3つを整える。これが、小さな会社が無理なく進められる順番です。ブランドの軸の作り方は、ブランドアイデンティティとはやブランドコンセプトとはで詳しく説明しています。知られる機会の増やし方は、認知度を上げるメリットと目的も参考にしてください。

よくある質問

Q. ブランド価値とブランドエクイティは同じですか?
ほぼ同じ意味で使われることが多いです。厳密には、ブランドエクイティは「ブランドが持つ資産」という見方、ブランド価値はその金額や大きさを指す場面で使われます。迷ったら、同じものを別の角度で呼んでいると考えて問題ありません。

Q. ブランドロイヤルティとの違いは?
ブランドロイヤルティは、ブランドエクイティを構成する要素の1つです。「繰り返し選ばれる度合い」を指します。ブランドエクイティはそれを含む、もっと広い概念です。

Q. 小さな会社でも測る必要がありますか?
金額で測る必要はありません。ただ、「どう思われているか」を知らないまま施策を打つと、的外れになりやすいです。お客さんへの3つの質問だけでも、やる価値があります。

Q. どのくらいの期間で高まりますか?
会社や業界によって違い、一概には言えません。一言・約束・見た目をそろえる作業は数か月でできますが、お客さんの頭の中に定着するまでには、繰り返し触れてもらう時間がかかります。

まとめ

  • ブランドエクイティとは、名前が持つ「選ばれる力」という無形の資産
  • 持つと、価格だけで比べられにくくなり、指名とリピートが増える
  • アーカーの5要素(認知・連想・知覚品質・ロイヤルティ・その他)で自社を見る
  • ケラーの4段(認知→意味づけ→反応→共鳴)で、足りない段から手を入れる
  • 悪い評判はマイナスに働く。広げる前に、いまの名前の印象を知る
  • 測るなら、お客さんに3つ聞く。高める順番は「一言・約束・見た目・知られる機会」

APOLLOSでは、会社の名前や見た目を整え、価値が届き、理解され、選ばれる状態をつくるお手伝いをしています。自社のブランドエクイティがいまどの段にあるか見てほしい、という相談も歓迎です。